今日は英語学習法ではなく、私の通訳業の思い出話をしましょう。
重要な内容ではないので、気楽な感じで聞いてください。
1983年に始めたので、84年には川崎税務署に確定申告をしに行きました。
その時、おもしろい経験をしました。
こう言われたのです。
「通訳という職種はないので、どれだけの所得税を徴収していいか、うちもわからないんですよね。
翻訳業というのはあるんですけどね。翻訳と同じ率でいいですか?」
なんと、通訳という職業は、1984年の日本では正式なものと見なされていなかったのです。
ショックでした。
自分はニートみたいな人間かとさえ思いました。
そういえば、通訳として雇用されるにあたって、英語の試験も、通訳の試験もありませんでした。
こんなのでいいのか、と思った記憶があります。
いろいろな事務所に登録していましたが、
ある事務所からは10%の源泉徴収をされていただき、
ある事務所は何も引かないで100%くれました。
その反面、国家試験がある通訳がありました。
それは観光ガイドのような仕事で、日本に観光に来た外国人に対する観光通訳を行うものでした。
その国家試験は、大変な難関だと聞いています。
英語だけでなく、日本史や地理の試験にも合格せねばなりません。
その割にはレートが安く、観光シーズンだけの仕事ということもあって、私は興味を持ちませんでした。
また、旅行代理店から派遣される仕事なので、私には縁がない世界でした。
さて、通訳事務所から正式にくる仕事以外に、
通訳の友人から来る仕事もあり、結構いいかげんな業界だったといえるでしょう。
通訳の友人からくる場合は、
「2つの仕事が同日に重複したんで、ひとつをあげるよ」という感じで回ってくる仕事もあれば、
お金を稼ぐ目的で、仕事を紹介してきた人もいました。
これは転売行為にあたり厳密にはいけないことですが、
当時の日本の通訳業界は、結構いいかげんで未熟でした。
私の先輩の通訳の方々は、
通訳のトレーニングなど全く受けていませんでした。
そもそも、そんな学校すら存在していませんでした。
私が通訳としてデビューしたころから、
やっと通訳学校が世の中に登場し始めたのです。
高いお金を払ってスクールに通わないとプロにはなれない・・・
そんな勘違いをされている方を時々見かけます。
私の友人でウェブ制作を本業としている人がいますが、
100%独学なのに、本当に素晴らしいサイトを制作できます。
NHK英会話上級クラス担当の小松先生(元サイマルインターナショナル社長)や、
サミット首脳会談の同時通訳、村松先生(元サイマルインターナショナル会長)も、
すべて独学です。
私自身も、通訳トレーニングは受けたことはありません。
100%仕事をしながら覚えました。
そんな私が、プロの通訳を養成することになるとは夢にも思いませんでした。
スクールなどの受け身の環境ではなく、試行錯誤をしながら、
生きるために必死で訓練を積んできたからこそ、
トレーニングのコツを会得できたのだと思います。
KDDIの子会社、テレサーブさんの会社を立ち上げるお手伝いもしましたが、
そこで勤務されている通訳は私がトレーニングしました。
他にも私の教え子はたくさんいますが、様々な分野で活躍しています。
思い出は尽きません。