数人の方々から、英語のプロになりたいといわれたことがあります。
目標を持たれることは、モーティベーションを上げる意味でも素晴らしいことです。
ただ、甘い考えの方々もいらっしゃるので、現実をしっかりと見つめましょう。
英語のプロと言われてもどんな職業があるのでしょう?
観光通訳、会議通訳、翻訳、中学、高校、大学、学習塾の教師のいずれかではないでしょうか?
全てをご紹介するわけにはいかないので、ここでは会議通訳だけに絞ってご紹介します。
「会議通訳」といってもいろいろな種類があります。
随行通訳、研修通訳、商談通訳、国際会議通訳、記者会見、政治会談(首脳会談とか)の通訳、企業内通訳など、
さまざまです。
ちなみに私は政治会談以外はすべてやりました。
政治の会談は、実はどの通訳もほとんどやっていません。
外務省が担当することがほとんどです。
その理由は、極秘情報が多いからです。
通訳の形態も、逐次通訳と同時通訳の二つに分かれます。
逐次通訳では、スピーカーの発言内容をメモを取っておいて通訳します。
これは note taking と呼ばれます。
同時通訳には、いろいろあります。
1.ウイスパリングの同時通訳
(通訳される方の耳元でささやく)
2.ブースに入って、ぶっつけの同時通訳
(7時間以上のお仕事: 通常3人体制で、15分交代)
(4時間以内のお仕事: 通常2人体制で、15分交代)
3.CNNニュースのように数分前に1回見ておいてからやる通訳
4.NHKテレビニュースのように、翻訳したものを読み上げるだけの通訳
(これをサイトラの同時通訳といいます)
気になるレートですが、
企業によって、2つのランクに分けるところや、3つのランクに分けるところがあります。
Aランクの通訳の場合ですと、8時間拘束(1時間の休憩あり)で10万円です。
逐次であろうと、同時であろうと、10万円です。
残業代は時給に 1.25倍 していただきます。
やっていて、私が楽しみにしていたのが食事です。
海外からのお客様をおもてなしするため、
とても豪華な内容で、同じものを通訳もいただけます。
北海道、室蘭の新日鉄様では山腹にレセプションハウスがあり、
フルコースのオードーブルだけでも4種類もでてきたのはビックリでした。
時々の海外出張も楽しみでした。
世界中に出張している友人も多くいましたが、
私の場合は、99%がアメリカでした。
マレーシアのクアランプールに通訳に行ったときは、
1か月間の断食中で、お客様は断食中なので、
日本人だけで寂しくランチを食べたことも、今となっては楽しい思い出です。
アラスカのブルーの氷山が解ける光景は忘れられません。
いい思い出ばかりではありません。
いちばん辛かったのは、
アメリカにいる14歳の娘が、私に会いに日本にやってきたのですが、
逆に私に、通訳の仕事でアメリカに行けという指令がでてしまい、
娘が泣き出してしまったことです。 さすがに憂鬱になりました。
会議通訳は毎日仕事があるわけではありません。
そこが最大の問題です。
子供がいらっしゃらない主婦の方々には最適のお仕事ですが、
固定収入を確保したい男性にはおすすめできません。
私の友人で、1か月間も仕事がない人もいました。
逆に、同じ日に2つの仕事が重複したりすることもよくあり、
友人の通訳に電話して代役をお願いするなどは、日常茶飯事です。
私は、できるだけ毎日できる通訳を探してやっていました。
外資系企業でのエンジニア間の研修通訳は、週5日勤務で有り難かったです。
月22日から23日間連続勤務となると、日給¥45,000ぐらいが相場です。
通訳は翻訳と違い体力のいる仕事で、健康に自信がある人にしか務まりません。
体調が悪いからといって休むことは、解雇に直結する最悪の事態です。
お客様側も、機密情報の漏えいを恐れて、いつもの通訳以外は嫌がります。
私は本田技研工業様からお仕事を頂くことが多かったですが、
企業内事情は知っているので、契約が終了しても延長をよく頼まれました。
くれぐれも間違った方向に進まないよう、
興味のある方は、お気軽に私にご相談ください。