誤解を避けるため、今まであえて言及を控えていましたが、
やはり言っておこうと思います。
イギリス英語とアメリカ英語の違いです。
実際、かなり違います。 しかも現実は、もっと複雑です。
例えばイギリスのなかでも、イングランド、ウエールズ、スコットランド、
そして北アイルランドでは、かなり違った言葉となります。
アメリカの場合、南部の英語ではケイジャンという方言があり、
普通のアメリカ人は聞いても理解できません。
発音が異なるだけではなく言葉自体が全くことなることもよくあります。
「全く」というのは、本当に通じないレベルです。
日産自動車の通訳をしていたとき、面白い経験をしました。
イングランド、スコットランド、ウエールズ、そして北アイルランドからエンジニアが来日し、
日本の日産技術者も交えて研修がありました。
出身地は違っていても、私も彼らも互いの英語が100%理解できたので、
意思疎通の意味では、全く問題はありませんでした。
そこで私は休憩中に、あるイギリス人にこう聞きました:
「僕がアメリカ英語を話すから、皆さんイヤじゃないですか?」
すると、意外な返事が返ってきました:
「そんなことを言ったら、我々イギリス人はみんな全然違う言語をはなしているよ。
僕が住んでいる実家から20分ドライブするだけで違う言葉に遭遇するんだよ。
違う地方のイギリス人とは南イングランドの言語で話しているんだ。
それが共通語みたいな言語だから」
ほっと胸をなで下ろした私は、好奇心からこんなお願いをしました:
「そうですか。安心しました。では、それぞれの言葉で話してみてくれませんか?」
みな快く引き受けてくれ、4地方の4種類の英語を聞かせてくれました。
お腹を抱えて大笑いしました。
私は失礼ながら、「それは本当に英語か?」と言ってしまいました。
アメリカの場合は多少事情が違います。
そこまで極端に違いが出るのは、南部の黒人の間で話されているケイジャン方言くらいしかありません。
ちなみに、テレビでケイジャンが流れたら必ず字幕が出ます。
それから、ニュージーランドの人にはこんなことを言ったことがあります:
「ニュージーランドの英語はイギリス英語と全く同じですよね?」
笑われてしまいました。 実際は、異なるそうです。
日本国内でもいろいろな方言がありますよね。
特に沖縄方言は外国語みたいで、とても日本語のようには聞こえません。
(ちなみに、沖縄方言は若い人はもう話せません)
「シングリッシュ」という言葉を聞いたことがありますか?
これは Singapore と English を組合わせた言葉です。
シンガポール人の英語もまた独特です。
インド人の英語も独特です。
こうした例を並べていくと不安に思われるでしょうから、今まで触れませんでした。
でも心配いりません。安心して、私の教材で学んで行ってください。
最後に、イギリス英語とアメリカ英語で、
発音や用語だけでなく、言い回しなどの表現の違いをご紹介しましょう。
飛行機の中で CA に、「毛布をください」と言う時の表現です。
アメリカ人: Can I have a blanket?
イギリス人: Can I trouble you to bring me a blanket?
(Can の発音は、アメリカ英語では 「キャン」、イギリス英語では 「カン」のように聞こえます。)
もうひとつの例は、お店で気に入ったアパレルを見つけた時、
「これ、試着していいですか?」と聞く場合の表現です。
アメリカ人: Can I try this on?
イギリス人: Can I possibly give it a go?
give it a go と言われるとネイティブのアメリカ人でもほとんどわからないでしょうから、
イギリス人がアメリカ人に話すときには使わないはずです。
おわかりでしょうか?
方言の違いがあっても、問題なく会話できるということです。
あなたが大阪の人と話すときに大阪弁で話す必要などありませんよね。
それと同じことです。
もうひとつ。
文化が異なれば、使う言葉や言い回しも違うのが当たり前です。
アメリカ人は初対面の人に馴れ馴れしく、タメぐちで話す人が多いです。
例えば、honey という馴れ馴れしい呼びかけを、初対面の人に使うこともあります。
南部に行けば、それが baby とか babe (ベイブ)に変わります。
なぜ初対面の人から honey とか babe とか呼ばれないといけないの!
そう嫌がる人は、アメリカ人の中でも多いです。
そのカジュアルさ好むか好まないか、単にそれだけなのです。
私の子供は、日本のサービス精神は世界一だと言っています。
アメリカ人のサービスの悪さに、イライラするそうです。
例えば機内で免税品を買おうとして、売り切れだったらどんな返事が来るでしょう。
日本人なら、「申し訳ございません。あいにく全部売れ切れまして・・・」とすまなさそうな顔で言ってきます。
アメリカ人は、「ないです」 で終わりです。
どういう言葉を話すかは、その国の文化にも、密接に関係しているのです。