KDDI は、民間企業になる前は KDD と言われていたことを
知らない人はいないだろう。
いろいろな改革が行われたが、ひとつユニークな改革は、
英検1級保持者を集めて通訳養成をして、
社員を通訳にして、電話による通訳を始めたことだ。
例えばあなたがアメリカに電話をかける。
相手とあなたの間にはいって、通訳を電話でするというものだ。
(株)テレサーブという子会社を設立して1980年代からスタートした。
通訳にとって便利なのは自宅で働けること。
なので主婦にはいい仕事ではないか?
私はそのテレサーブの設立に関わった。
つまり、KDDI の正社員の中で、英語力の高い人を集めて
週2回 KDDI さんに出張レッスン(講師)をしていた。
全員女性だった。約10から12人のクラスだった。
その電話通訳サービスがスタートして、テレサービスさんから
私も通訳としてお願いできないかと依頼された。
働き方はふた通りある。
① 自宅で必要なときだけやる。1回10分から30分くらい。
② 大手町の会社まで通勤して8時間労働する。
私は会議通訳で一杯だったので、①の選択でお引き受けした。
会議通訳に比べ、内容が一般的内容ばかりなので、準備が必要なく助かった。
似た話がトヨタ自動車さんにもある。
トヨタ自動車さんとの関係は、東京、水道橋支社とのお付き合いだけ。
ここでも英検1級保持者を10人あまり集めて、会議室で通訳の研修が行われた。
その講師を勤めさせていただいた。
そもそもの背景は・・・
自動車メーカーには技術面のノウハウの極秘情報が多いので、
通訳も、仕事を請け負う時に念書を書かされたことがあった。
「外に会議の内容を漏らさない」という念書だ。
そこでトヨタさんは、内部の社員を通訳に育てようという計画を始めた。
全員英語が達者な方ばかりで、私なんかでいいのかと、戸惑いも感じた。
それに生徒さんは全員男性で、全員女性だった KDDI さんの時との
ギャップが、ある意味滑稽だった。
やってみて、やっぱり通訳は素人だな、と感じた。
発言をそのまま訳さなかったり、
言っていない事を勝手に挿入したりとか、
話者の言葉を一人称で言わないことなどなど・・・
つまり、「要するに、***さんのおっしゃっているのは***といっているんですね・・・」と通訳してしまう。
英語のレッスンではなかった。
訳し方のレッスンに集中できた。
最初は、緊張して心配したが、
週1回のレッスンを1年間もやっていると仲間意識が芽生えてきて、
1年契約が終わり、卒業時になると食事会をしてくださって、
とても楽しい仕事だった。
ただ、レッスン日と現場通訳が重なると、困った。
社長に聞いたら、
「通訳は高松さん以外にもいるから、レッスンを優先してください」
との指示で、それだけはちょっと困った。