現在私は現役の会議通訳者ではありません。1983年から始めた仕事も2001年の仕事が最後だったと思います。もし、通訳が儲かる職業ならば、辞めてはいません。 儲からないから辞めました。 英語の通訳というと、みんなから「凄い!」と昔はよく言われましたが、隣の畑はよく見えるだけだということを今からご説明いたします。
通訳ガイド
よく観光ガイド通訳にあこがれる方がいらっしゃいます。 この仕事は国家試験に合格することが必要ですが、そのくせ、低賃金で働くことになります。さらには、観光シーズンだけの仕事となります。従って、主婦のおこづかい稼ぎ程度にしかなりません。さらには、最近はボランティアでやられるかたもいて、仕事のチャンスは少ないようです。 国家試験ですが、英語ができるだけではだめで、日本歴史を勉強する必要があります。結構面倒なお仕事です。 わりにあわないので、私は1回もやったことがありません。
同時通訳
同時通訳といっても、whispering の同時通訳、ブースに入ってヘッドセットをつけてやる本格的な同時通訳、サイトトランスレーションの同時通訳と3種類あります。ひとつひとつご説明します。
1.whisperingの同時通訳
これはブースに入らないでヘッドセットも装着しないで、誰かの傍で、聞き手の耳元でボソボソと通訳するものです。
2.ブースに入る同時通訳
これは通常7時間以上の場合は、3人体制で行います。半日仕事の場合は2人体制が常識です。ガラス張りのブースに入ってヘッセットをつけて同時に訳していきますが、99%の場合、briefingといって、本番が始まる前に顧客と内容の打ち合わせをやっています。通常は15分交代でコンビを組みます。結構ほとんど全部訳していますので、15分でヘトヘトにくたびれます。
3.サイトラ(sight translation )の同時通訳
これは話者のスピーチ原稿を見ながら訳します。そのため、リスニングはとても楽です。 TVニュースの二カ国放送はあれは本当の通訳ではなく、前もって翻訳されています。間に合わない部分だけは本当にぶっつけの同時通訳になっています。原稿があまりにもぎりぎりに来ますので。 サイトトランスレーションというと長いので、サイトラと名づけたのは、実は私です。
逐次通訳
文字とおり、逐次話者がしゃべるのを区切ってくれた箇所で通訳をします。 同時通訳よりも難しいのは、リテンション(retention)といって長文を覚えておかないといけません。そのためメモを取りながらやります。 私はどちらかというと、逐次のほうが得意でした。
KDDテレサーブ
これは1980年代にKDDがテレサーブ(株)という子会社を設立しまして、電話で通訳をするというサービスです。このテレサーブの立ち上げのお手伝いをしたのが、恥ずかしいですが、実は私です。 KDD本社に週1回ペースで行きました。英検1級保持者だけを集めて、私が通訳に養成いたしました。
さて、気になるところの、報酬ですが、Aランク、Bランク、Cランク、と分けている企業もあれば、Aランク、Bランク、一般という言い方をするところもあれば、2種類に分けていることろもあれば、それは企業によってまちまちです。
Aランクで8時間拘束(ランチタイムあり)で¥80,000から100,000 残業すると、時給x1.25と加算されます。
Bランクで8時間拘束(ランチタイムあり)で¥30,000から¥50,000 残業すると、時給x1.25と加算されます。
Cランクで8時間拘束(ランチタイムあり)で¥20,000くらいです。残業すると、時給x1.25と加算されます。
とても高給に聞こえるでしょうが、問題は、めったに仕事がないことです。だから主婦が多いのです。男性で家族を養うのは厳しいです。
私は、Aランクでしたが、Bランクの報酬で、その代わり1年間毎日サラリーマンのように働くという契約を一番好みました。
アメリカ、オハイオ州、メリーズビルの本田技研工業様はそのありがたい顧客でした。
でも、そんな都合のいい仕事はなかなかないもので、通訳の仕事を継続してやるというのは大変なことです。男性は生活が苦しくなり途中で大学の英語の講師とか、転職する人が多いです。
在宅翻訳
これも主婦にはいいお仕事ではないでしょうか?男性には向かないと思います。A4サイズ1枚でいくらという請求のしかたをします。問題は通訳と違って、ごまかせないので、きちんと調査までして訳していると、コンビニのアルバイトの給料よりも安くなります。
社内翻訳
これが一番確実な収入源です。サラリーマンと同等の給料がいただけます。それ以上は無理です。 勤務時間もサラリーマンと同じです。
英会話講師
ほとんどがネイティブを雇用しますから、日本人を雇うところは、ECCぐらいのものでしょうか? 最近のECCには、昔と違って帰国子女の若いインストラクターとかがいるようです。
結論:
英語を生かした職業にあこがれる若者はいますが、英語で生計をたてるというのは簡単なことではありません。英語は武器として別の企業で勤務されるほうが安心だといえます。日頃から私が提唱するように、英語の専門家に頼るのでなく、日本人全員が英語をしゃべれるようになったほうが賢いのでは、と思います。