昔からのことわざで、「習うより慣れろ」という言葉があります。
知識として教わるよりも、
実際に体験を通じて慣れていくほうが習得は早い、という意味です。
英語学習でも全く同じことが言えると、何度も申し上げました。
極端な例をご紹介しましょう。
私は犬を3匹飼っていますが、
時々沖縄のエメラルドグリーンの海に連れて行って
ビーチ100mくらい離れた沖合から、犬を海に放り投げたりします。
すると、泳ぐのは生まれて初めてなのに、
しっかりと「犬かき」でビーチまでたどり着くのです。
誰も「犬かき」を教えたことなどありません。
たぶん動物の習性で、生まれつき身についているのでしょう。
習性は、「習うより慣れろ」の究極の姿のような気がします。
どんなに頭で理解しても、泳げるようにはなりませんよね?
何度もやってみて、身体が自然に動くようにならないと駄目です。
つまり本などを読んで頭で学習するよりも、
この犬の習性のように、身体に染みついてしまうくらいまで、
トレーニングすること(=慣れること)が必要なのです。
なぜ、こんなことを言うのでしょうか?
前回で Spot the Blunders(=間違い探し)は終わりましたが、
こんなことを感じた方も多いでしょう:
「英語って、学習することが無限にあるじゃないか!
これでは、英語を話すのに10年かかるよ!」
ご安心ください。
私のようなプロの通訳者・翻訳家でも、英語のミスは多々あるのです。
翻訳の業界では、和訳した英文は、ネイティブによる校閲(=proofreading)
を必ず行ってから商品を納入します。
英字新聞 Japan Times は日本人が英語で記事を書きますが、
ネイティブに見せれば、間違いなく校正されます。
英文法上正しくても、
日本人感覚とネイティブとでは言い回しが異なるからです。
この感覚の違いは、言葉を超えた文化の違いです。
そうです、英語の学習にはきりがないのです。
どんなに一流の日本人の英語の先生でも、
ネイティブの発音と100%同じにはならないように、
日本人の書いた英文は、
100%ネイティブの書いた英文とは同一にはならないのです。
そういう意味で、私も英語の学習は、生涯続きます。
だからといって、完璧な英語になるまで英語は話さない
などということはありません。
よく考えれば、日本語も完璧ではありません。
でも、そんなの気にしませんよね?
完璧ではないのに、毎日、平気で使っているのです。
間違った表現を使いながらも、自分の意志を伝え、時には直され、
そうやって覚えていくのです。
今回の Spot the Blunders で、
「へー、そうなんだ。面白い!」と興味を持たれた人もいる一方、
文法やニュアンスの間違いなどはきりがないと、
少々不安になってしまわれた方もいたでしょう。
もう一度言います。完璧である必要はありません。
日本語と同じで、とりあえずは意味が通じれば良く、
段々と一生かけて、ブラッシュアップしていけばいいのです。
大切なのは、どんどん使うことです。
そのために最も効果的な方法が、
以前からお勧めしている「独り言トレーニング」です。
わかりました!と言いながらやっていない方が多いのですが、
間違ってもいいので、どんどん英語を話すトレーニングを積むには、
この「独り言トレーニング」が最適な方法です。
毎日それをやりながら、生涯かけて徐々に、
英語をブラッシュアップしていけばいいのです。